ラム酒屋のサイトをご覧いただき大変ありがとうございます。店主の池田です。
ラム酒は、世界で4万以上銘柄があると言われていて、酒類がとても多いので、どのようにラム酒を選んだらよいか悩まれる方も多いと思います。
一般的には、色や素材、産地によって分類され、それぞれの特徴を紹介するケースが多いように思いますが、それだけだといまいちわかりにくかったり、実際に飲んでみたら「思ったのと全然違った...」「Amazonのレビューで甘いと書いてあったのに全然甘くない...」ということが多いように思います。
そこで、あくまで私見ではありますが、今回は「これからラム酒を飲んでみようというお客様がどういう方か?」にフォーカスして、ラム酒選びをお手伝いさせていただきます。
どんなお酒を、どんな風に飲むのが好きですか?
まず、ご自身(またはプレゼントされる相手の方)が、以下のいずれかに当てはまりますか?
もしいずれかに当てはまるようであれば、ラム酒を美味しいと思っていただけると思います。
- モスコミュール、ジントニック、モヒートや、リキュールを使った甘めのカクテルが好きな方
- ハイボールなどすっきりした蒸留酒のソーダ割りや水割りが好きな方
- マティーニやダイキリなど辛め、または度数の高めのショートカクテルが好きな方
- お酒はあまり飲まない(飲めない)けど、洋酒の風味があるチョコレートやケーキが好きな方(ロッテのラミーや、ラムレーズンの入ったお菓子、高級めな洋菓子店のトリュフチョコレートやケーキなど)
- ウイスキー、ブランデー、ジン、テキーラ、焼酎などの蒸留酒を、ロックやストレートで飲むのが好きな方
それぞれの方に合ったラム酒は?
次に、それぞれの方に合ったラム酒のタイプを紹介していきます。少し長いので、ご自身が該当する項目まで読み飛ばしていただければと思います。
1. モスコミュール、ジントニック、モヒートや、リキュールを使った甘めのカクテルが好きな方
甘めのカクテルが好きな方におすすめしたいのは、①一般的なホワイトラム、②スパイスドラム、③スペイン系のダークラムです。
①一般的なホワイトラムは、透明なラムで、熟成していなかったり熟成期間が短かったりすることもあり1,000円ちょっとで購入できるお手軽なラムです。【バカルディ】とか【ハバナクラブ】とか、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。モヒートやキューバリブレなどにも使われています。
度数は40度くらいのものが多いので、ストレートやロックで飲むとアルコール感がかなりきつく感じると思いますが、樽の風味等があまりなくすっきりしているので、コーラやオレンジジュールと混ぜて飲むだけでもとても美味しいです。
お酒の品ぞろえが良いスーパーマーケットにも売っていることが多いと思いますので、ぜひ試してみてください。
②スパイスドラムは、オレンジなどのフルーツや、バニラやシナモンなどのスパイスやハーブを漬け込んだラム酒です。有名なものだと【キャプテンモルガン】で、酒屋さんにもよく置いてあります。
バニラの香りがしっかりあって味も甘めなので、甘くないお酒が苦手な方におすすめです。ただ、漬け込んであるものの癖はあるので苦手な方は苦手かもしれません。少しマニアックですが、【レモンハート ブラックプール】は、甘いバニラとシナモンの香りに果物の甘さが溶け合って、シュトーレンとかクリスマスプディング、フルーツケーキが飲み物になった感じですのでおすすめです。取り扱っている酒屋さんは少ないと思いますので、当店でも仕入れていこうと思っています。
スパイスドラムではないですが、【マリブ】などのラムリキュールも飲みやすくて良いですね。
③スペイン系のダークラムは、スペインのシェリー酒の熟成方法を応用して熟成しているもので、ラム酒の中では甘味が強く、黒糖やレーズン、バニラのような香り、味わいのするラム酒です。スパイスドラムのようにバニラやフルーツそのものが入っているわけではないですが、長年樽の中で熟成させた奥深い甘さがあり、香りも癖がなく芳醇です。
代表的なのは【ロン サカパ23】で、オロロソシェリーやペドロヒメネスなどの樽で熟成され、上質なコニャックに例えられるように香り高く、黒糖やバタースコッチ、レーズンのような味わいがあります。一度ロックで楽しんでみていただきたいですが、度数は強いので、チョコレートとペアリングしたり、バニラアイスにかけていただくと非常に美味しいと思います。
余談ですが、「スペイン系」というのは、かつてスペインの植民地だった国々で作られるラム酒だからです。ラム酒は主にカリブ海で作られますが、かつての宗主国の影響を色濃く残しています。
当店では今のところスペイン系のラム酒のご用意がないので、早めに仕入れておきたいと思います(汗)
2. ハイボールなどすっきりした蒸留酒のソーダ割りや水割りが好きな方
こちら方に特におすすめは、イギリス系のラムです。
イギリス系のダークラムは、スコッチの蒸留技術を使って重めの酒質に仕上がっています。バーボン樽に由来するバニラやオーク、キャラメルの風味が前面に出て、バナナやマンゴーなどのトロピカルフルーツのフレーバーがあるうえに、スペイン系のような濃厚な黒糖の甘味が少なめですっきりしているので、ソーダ割りで飲むとすっきりしつつ豊かな風味が感じられます。映画『007 カジノロワイアル』で、ジェームスボンドが【マウントゲイのソーダ割り / Mout Gay Rum with Soda】を頼んでいました。
水割りは、少し熟成が長めのタイプ(6年熟成以上)のトワイスアップがおすすめです。たとえばマウントゲイの熟成が長めのダークラムは、トワイスアップにしていただくと樽からくるキャラメルのような甘味が前面に出て、アイリッシュウイスキーのような味わいが楽しめると思います。
ただ、イギリス系のダークラムと一口にいっても、産地によってかなり味わいが違うので注意が必要です。マウントゲイを含むバルバドスのものは、重めの原酒ができる単式蒸留器と、軽めの原酒ができる連続式蒸留器でつくられた原酒をバランス良くブレンドしているので、複雑さと飲みやすさが同居しているのでおすすめです。ジャマイカのものは、エステル感と青いバナナの香りの特徴的な香りと味わいがあるので好き嫌いが分かれますが、セメダイン系のものが好きな方ははまると思います。
3. マティーニやダイキリなど辛め、または度数が高めのショートカクテルが好きな方向けのラム酒
ダイキリなどのカクテルベースになるホワイトラムはもちろんですが、ここではフランス系のホワイトラムをおすすめしたいと思います。
フランス系のホワイトラムは、白い花やマンゴー、フレッシュなサトウキビジュースの香りや豊かな味わいがあります。熟成していないのでアルコール感がしっかりあるのに加え、潮やベジタル(ホワイトアスパラガスなど?)な独特の癖があるので苦手な方も多いのですが、ライムと砂糖をスプーンで潰しあわせてそこに少量のラムを注いで飲む【ティポンシュ】として飲むと、アルコール感がマイルドになるだけでなく、砂糖の甘味にラム酒の適度な甘味が引き出され、ライムのフレッシュな酸味とあわさって華やかで豊かなすばらしい味わいが楽しめます。
当店ではホワイトラムは扱っていないのですが、信濃屋さんなどで2,000~3,000円前後で購入ができると思いますので探してみていただければと思います。
4. お酒はあまり飲まない(飲めない)けど、洋酒の風味があるチョコレートやケーキが好きな方
こちらの方には、上記のスパイスドラムやスペイン系のダークラムもお勧めですが、特に、フランス系のダークラムをおすすめします。
ダークラムは、ブラウンの色がついているものなので見た目ですぐわかると思います。この色は、熟成している樽から長年をかけてすこしずつしみ出してきたもので、樽由来の自然で芳醇な香りと、滑らかでスムーズな味わいが特徴です。
フランス系のラム酒は、華やかなフルーツやスパイスの香りと味わいが特徴的なためスイーツとの相性が抜群です。カヌレ、ババ、モンブラン、トリュフチョコレート、シュトーレンなどの香り、風味付けに使われることが多いですので、スイーツに少しかけて食べたり、スイーツとペアリングしてほんの少しだけ味わったりすると、お互いの良さが引き出されて美味しいです。
特に、アイスクリームにかけて一緒に召し上がると、アルコール感や樽の苦みが消えて、レーズンやリンゴなどのフルーツやシナモンなどのスパイスの香りがふわっと香り非常に美味です。
お酒というと、「きつい」「酔っぱらってしまう」「体質に合わない」と感じられるかもしれないのですが、熟成したダークラムの魅力の大半を占めるのはその芳醇な香りなので、飲まなくても香っているだけでとても幸せな気持ちになれますので、サンプルで購入いただいて香りだけを楽しむのも良いかと思います。
※ ラムレーズンはジャマイカのラムが使われることが多いので、ラムレーズンを作るときにはイギリス系のジャマイカのラムを使われたほうが、それっぽい味わいになるかと思います。
「5. ウイスキー、ブランデー、ジン、テキーラ、焼酎などの蒸留酒を、ロックやストレートで飲むのが好き」な方向きのラム酒
こちらに当てはまる方は、蒸留酒の魅力を十二分に楽しまれている方なので、お一人おひとりのお好みを伺ってからご紹介したほうが良いと思っていますが、少しでも道しるべになればと、概略をお伝えします。
樽熟成しているウイスキー、ブドウから作られるフルーティーなブランデーと、(基本的に)熟成していないジン、テキーラ、ウォッカ、焼酎ではだいぶ味わいが違うので、それぞれに分けてご紹介していきます。
まず、ウイスキーをロックやストレートで飲まれる方には、ウイスキーに近い蒸留・熟成方法で作られているイギリス系のダークラムが一番親しみやすいと思います。
特に【キングスバリーのデメラララムシリーズ】は、しっかり重めの酒質のデメラララムをスプリングバンクやラフロイグなどのスコッチの樽でフィニッシュしているので、スコッチとラムの両方の味わいが楽しめます。度数が50度後半~60度前半なので上級者向けとは思いますが、非常に豊潤な香りや長いフィニッシュを楽しめます。ほかにも、セメダイン香が好きな方にはジャマイカのラム、焼いたタイヤ系が好きな方にはトリニダード&トバゴの【カロニ】、チェリーや桃系が好きな方はモーリシャスの【ニューグローブ】おすすめです。
バーボンやアイリッシュウイスキーが好きな方には、甘めのスペイン系のラムもおすすめです。ただラムの場合甘いものはしっかり甘いので、最初は、スペイン系の中では比較的さっぱりしているベリーズやパナマのラムからはじめられるのが良いと思います。
次に、ブランデーが好きな方は、ずばりフランス系のダークラムをおすすめします。白い花の香り、プルーンや梨などのフルーツに、シナモンやバニラのような甘いスパイスの香りが加わり、長期熟成のコニャックやアルマニャックのような味わいがあります。気候が温暖なカリブ海では、ヨーロッパに比べて3倍も速く熟成が進むと言われますが、一度味わっていただけるとそれが分かるかと思います。
最後に、ジン、テキーラ、焼酎などをストレートやロックで飲むのがお好きな方には、透明なホワイトラムが全般におすすめですが、ゴールドラムといって、熟成が比較的短めのラムは、ダークラムほど濃厚でなくすっきりしつつも、複雑でフルーティーな味わいのゴールドラムもおすすめです。少し癖はありますが、ラム酒屋で扱っている【ビエール アンブレ】は、コアなファンが多いお酒です。
本当は、もっともっと細かくご紹介したいところですが、すでに長文になってしまっているので、別の機会にお伝えできればと思います。ここまでお読みいただき大変ありがとうございました!